夕暮れに落ちる
夕暮れ時に頭重く、首うなだれて涙がしとしとと湧いては落ちる。
なんでかな?どうした私?何も問題はないはずなのに、何故だか込み上げてくるものがある。
そういえばすっきりしていた左膝の裏がまた引きつって痛い。ここ2ヶ月ほどはかなり軽い足取りになっていたはずなのに。
びっこひきひきキッチンでコーヒーを淹れ、それを飲みながら夕暮れ時の空を見ながら、溢れる気持ちに身を任す。
温かな涙が湧いては溢れ湧いては溢れ。頬は冷たく濡れてゆく。濡れるに任せて訳の分からぬ悲しみに浸った。15分くらいだろうか。涙が流れるとなんだか色々軽くなった。
仕事を片付けて、イカリ肩をなだめホッと一息。そうだ、私休んでなかったよ。来客あり、アテンドあり、イベント準備に開催にDMの作成が二つ。それと家のあれやこれ。そっか、そっか、疲れてたんだね。昨日まであんなに元気だったのに、急降下するんだね私。まるで子供みたいだよ、つぶやきながら身体をよしよし。びっこひきひき寝室へ。
腫れた瞼を閉じた寝入り際、ある景色が浮かんで来た。
ああ、そうだ、そうだった。思い出した。思い出したぞ。今日行ったあのゴミ屋敷だ。あそこで邪気をもらったんだ。
古い建材の残骸、自然崩壊間近の廃棄車、シュールに並んだブラウン管の中身、サッシや割れた窓ガラスなどなどが散乱した敷地。コンクリートがあちこちひび割れた、暗い屋敷内を覗く。まるで大きな生き物の死骸のような室内に昭和の電化製品のがらくたがぎゅうぎゅうに詰まっていた。そして天井がその上にたわんで落ちかかっていた。なんとか崩壊を防ごうと家主が戦った跡がある。落ちてくる天井を太めのアルミチューブで一本斜めに留めてある。それが一番怖かった。ゴミを溜めないではいられない人の痕跡。
そうか、あの邪気に私は負けてしまったのね。寝るときにベッドの中でふとそう思うと理由がわかった安心感で寝落ち。ぐーすか。
そんなことあるよね。
あるある。