五つの麺の味
素麺
拉麺
冷麦
蕎麦
それからそれから、うどんさん
美味しい麺料理は、つるっと飲み込んでふはーっと満腹満足幸福感。
「素麺」は冷たくして茗荷で、つるつるっといただいて、清らかな食後。口の中に残った鰹の出汁と、茗荷の大人な爽やかさの余韻に浸りたい。今まで起こったことを綺麗さっぱり洗い流して軽やかにリセット。
「拉麺」は手強いぞ。食べちゃいけない禁断の拉麺は、深いコクと出汁がいけないことをすべて飲み込んで魅力的ににたぷたぷと私を呼ぶ。半分に切られた黄身が半トロの卵が狂おしいほどの生唾を生む。ごくたまにいただく拉麺は黒い幸せをドスンと私にもたらしてくれる。
「冷麦」はコザのおばあちゃんの家を思い出す。みんながいそがしく働く昭和のコザの小さな市場の店屋物。少しぶよっと伸びちゃった冷麦にはピンク色の麺が混ざっていたな。茹ですぎて、コシがなくって、けれど卵焼きと刻んだネギとぴったりしっくり。小学生の頃の私の夕方の味。食べていた景色が全部部屋に漏れた夕焼けの色。
「蕎麦」はいつでも心の側に置いておきたい魂食。沖縄出身なのだけれど、噛むほどに甘いあの味を、程よく切り上げて飲み込んで見る。噛んだらほのかな甘みと、蕎麦のつぶつぶと茹で加減の妙が相まって、絶品に出会った時には至福が胃から頭まで泉のように湧き出てくる。ひたひたひたひたと大人の愉しみ。
「うどん」はこれまた奥が深い。ゴボ天うどんの風呂に浸かりたいと思ったほどに、九州でいただいたそれは優しい麺とふやけてもうまいゴボ天の抱擁は情けが深かった。四国でぶっかけを食べた時のガツンと目の覚めるようなうまさは私の味蕾の味わう力のボルテージをあげた。あれから私はかぼすラブ。
ごめんごめんとずっとつぶやいていたら生まれた、五つの麺のお話でした。