歩幅

大人読本 田原あゆみ

足の矯正をはじめてから約4ヶ月が過ぎた。

自分の足型をとって、どこにねじれがあるのか、どの足が軸足なのかを診てもらった後、バランスが取れるようにインソールを作ってくれる。そのインソールを靴に入れて歩くとだんだんと足が健やかになり本来の全身のバランスを取り戻して行くらしい。

そういえばこの小さな二つの足の裏の面積で、身体全体を支えているのだから大事にしなくっちゃ、そう納得して取り組んできた。

インソール装着後に歩く時の注意を数点提示してもらう。その中でも大切なのが左の足を意識して使うこと。

「ほらほら、田原さんの場合右足が強いから歩幅左右違うんです。左足は体がねじれるな、というくらい強く蹴ってはじめて右足と歩幅が揃うんですよ。気をつけてみてください」

言われてはじめて気がついた左右の歩幅の違い。私の場合右に重心が偏り気味で、右足の方が強い。なので左右のバランスが崩れていてそこにねじれが出ているとのこと。なのでできるだけ左足を力強く蹴って、右の歩幅に合わせるとだんだん鍛えられていってバランスを取り戻してゆけるらしい。

なるほど納得。

それから私はできるだけ歩いて足を矯正しようと、東京へ行くたびに1日に15K前後のウオーキングを心がけた。左足を意識してより強く歩道を蹴ってえっほえっほ。こんなに左足のことを考えたことは無いくらいに意識して鍛えた。

結果どうなったかというと、やりすぎたのだろう。左の膝を壊してしまった。痛くてしゃがめなくなってきたのだ。それでも、痛いのは好転反応かしら?錆び付か無いように歩いた方がいいよね、と懲りずに歩いた。実際歩いていた方が座ってばかりより調子がいいような気がしたのだ。

びっこを引き出した私を見かねて、「筋肉が凝っているんじゃ無いの?」と、友人が自慢の部分マッサージ機を使って膝の後ろや周りをブルブルマッサージしてくれたその夜のことだ。座っても、寝ていても痛み出した左膝。赤く腫れていて、足をまっすぐ伸ばすのも苦痛となってしまったのだ。

翌日紹介された整体院の先生がとても丁寧に調べてくれた。結果わかったのが膝周りの筋肉のほとんどが炎症を起こしているという事実。膝の裏にも表にもたくさんの筋肉が支えあって、屈伸ができるようになっている。それが炎症を起こしているので、曲がるたびに腫れたた筋と軟骨がぶつかって痛みが走るということらしい。キネシオテーピングを貼って筋肉をサポート。安静な生活を言い渡された。

やりすぎたよな・・・でもどうしてインソールを履いているのに悪くなっちゃったのかしら。私の中に疑問は残っていた。

ある日別の友人からフェルデンクライスというメソッドのことを聞いた。そのメソッドを受けたことはないし、本も読んでい無いのだけれど、友人が話してくれたことが胸に残った。

「弱い方、動きの範囲が狭い方に合わせると左右のバランスがそこで取れているということになって、『問題はない』と脳が認識する。けれどもできる方、可動域の広い方と比べると弱い方には『問題がある』と脳は認識する。なので、身体を意識して動かした時、左右比べて弱い方、可動域の狭い方に強い方を合わせると問題は解消される」というようなことだった。

 

なるほど、半世紀もかけて強くなった右足に弱い方の左足を合わせようとした結果、左膝はオーバーヒートしてしまったのか・・・。そう気づいた後から私はできるだけ左膝の調子に合わせて、右足を運ぶようにした。私の場合これが合っているようだ。すぐシャカリキになる頑張り気質なので、逆に弱い方に合わせてクールダウン。

それが功を奏してずいぶん楽になってきた。この3週間ほどでずいぶん曲がるようになってきて、腫れもほとんど引いてスッキリにっこり。

 

強い方に合わせると、弱い方はより弱るのか・・・これは深いぞ。左右で一つのこの身体、弱い方に負担をかけて痛めてしまうと、強かった方も負荷がかかって結局は壊れてしまう。

うん、うん、深い。いろいろなことに応用できるな。そう思って子供のいる家庭のことを想像してみた。大人の体力に合わせて旅程を組むと、子供がくたびれて結果台無しになるということはないか?けれど、子供の体力や喜びを考慮して旅程を組むと、結果家族全員がゆったりと楽しめる。そんことってあったなあ。

膝を通して気がついた、このことが思いの外深いので今後も掘り下げていってみたい。シャカリキにならずに、ゆっくりと、細部を意識してみよう。

心身のどこかで根をあげて泣いている子供を発見したら、なだめてチャンネルをその子に合わせよう。びゅんびゅん走って、がつん、と倒れてしまわないように。


2017年08月19日 | Posted in 日々 | タグ: Comments Closed 

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