旧盆中日
目覚めたいのに中々身体が起きない。起きよう起きようと思うのだけれど、気づくと未だ布団の中。そんな朝。すこしだけ肌寒くて毛布が心地いい。ああ起きたい、けど気持ちがいい、と葛藤していたら、私のほっぺに冷たく柔らかいものが触れた。ペチペチペチとなんども。それがすごく地持ちがいいのだ。薄眼を開けると、姪っ子が私を覗き込んで私の顔を撫でている。目が合うと恥ずかしそうに笑ってる。起き上がって周りを見渡すと、末の妹と娘が笑って台所に立っていて私達を見てる。
「えー、来ていたのー。うれしい」と、姪っ子に言って毛布の中に引きずり込む。二人でぬくぬくしながらまたうとうと。するとさらに賑やかになった部屋の中。見渡すと、すぐ下の妹夫婦に妹の友人夫婦までいるではないか。みんな東京に来ていたのね。朝早く羽田に着いて直接ここへ来たのね。
ばたばたと小さな子供が走って向こうの部屋に行った。誰?
ああ、きっと末の妹の友達親子ね。やっと布団から出た私は姪っ子と手を繋いでみんなに挨拶しようと回っていく。あれれさっきまでいた次女夫婦と、その友人夫婦はもう次へ行っちゃったのね。残念、おしゃべりしたかったのに。まあ、せっかく東京へ来たのだもの、予定はいっぱいかあ。ふん、寝てて損した。
あら、こんにちは。初めまして。おむつが取れるか取れないかくらいの子の子育て真っ最中のお母さま、余裕なさそうなお顔してますね。心でつぶやきよく見てみたら、ぎょぎょ。畳の上に黄色く濡れた世界地図。それはあなたの子供のあれですか?
き、綺麗にしてくれるんでしょうね?ここは娘が優しい老大家さんから借りてる部屋よ。と、心の中でたたみかけ、顔はにっこりとご挨拶。ほほほ。
次の間に行くと天窓から光がたくさんさしていてすごく気持ちがいい。他にも何人か人がいてみんな気持ちよさそうに朝の柔らかな光を楽しんでいる。ああ、みんな来てくれてうれしい1日が始まった、と。私は大きな伸びをした。
目が覚めた。ほんとうに目が覚めたら、12畳一間についたキッチンで娘が味噌汁を作っていた。あら、そうよこれが現実。この部屋あんなに広くないものね。間取りも違うし、私とあなた2人だけ。
ああ、そうか。みんな来てくれたのね。身近な人たちの姿を借りて。私の愛しいご先祖さまたちが。