靴を変える
何か一つでも身に付けるもののスタイルを変えると、それが全体を変えるきっかけになる。
10年前の私に今の私のクローゼットをみせたらきっとすごく驚くだろう。あの頃着ていた服とは全く違うスタイルのものがほとんどを占めている。
そして、何が一番変わったかというと、それは「靴」だ。
もともと靴好き。けれどなかなか足に合う靴がなくて、旅行や長時間歩く時には苦労も多かった。デザインを優先するか、履き心地か。悩んで悩んでの着地はやはりデザイン寄り。
だって靴ってとても完成度の高い存在だと思うから。
左右対で1つの世界。
脱いでも立体的。
玄関に大好きな靴が待っていてその完璧な世界を一瞥してほくそ笑む。その靴の中に足を入れる喜びよ。履いている時には忘れてしまうことも多いけれど、ウィンドウに映る自分の姿をちら見した時やはり足元がいいと惚れ惚れと嬉しくなる。
昨日のこと、かねてより気になっていた靴のブランドのコレクションへ行ってきた。
空間を見回して、やはり靴って美しいなと惚れ惚れする。ヨーロッパの古くからあるデザインと、履きごごちは作り手が考慮を重ねて設計。私の足にも馴染みそうなフィット感が嬉しい。
そういえばこんな靴履いてみたかった。と、20代の頃探して回ったことを思い出す。当時は歩いて探すしかなくて、散々歩いて足が痛くなった。結局すごく好きな靴は甲にも幅にも合わなくて断念。その時心破れたデザインに似た靴を発見して心が萌えた。
ときめくと変な物質が出てきて道を見失うことが多々あるので、ここは自分を抑えて我がチームの力を借りよう、借りねば。その旨そのブランドの皆さんにお伝えして、協力を仰いでみると快くサポートしてくださるとのお返事。
さらにときめいて、挙動不審になりかけたのでボタンがたくさんついたブーツを試足。1つ1つのボタンを苦労して留めてゆくとだいぶ心も落ち着いてきた。息を吐いて鏡の前に立つ、そうそうこの靴よずっと履きたかったのは。振り返って「お値段は?」と訊いてみると、なんと割引対象なのだそう。昔作りすぎてしまった靴を数足だけ値引きしているのだそうだ。しあわせなホルモンの爆発後、私は何度も振り返ってさよならを言いふらふらと外に出た。手にはそのボタンブーツが入った袋を下げて。
時間にすると2時間弱の出来事の中に大事なことがぎゅっと詰まっている。今までと、これから。
新たな水が流れ込んできたことを感じながら、夕方京橋、夜中目黒。今は小さな川沿いの部屋。