明け方の夢
未だ夜が明けきれない時間帯。明け方の夢はときに印象深い。
一月にほんの数回印象的な夢を見る。その夢は色や音、感覚付きの付で現実みたいにリアル。私自身が見ているような夢もあるけれど、別人になって生きているかのような夢もある。昔見た夢のこと。
場面は古い白いタイルで囲まれた浴室。ろうそくの明かりだけの薄暗い中、私は白いリネンの長いローブを着て鏡をじっと見つめている。鏡は古いのか写りが不鮮明で淵から少しずつ腐食したような染みがある。その中央に浮かび上がった自分の顔をしばらくの間悩ましく見つめた。白髪が少し混じった髪の毛、顔にはしわが浮き出ている。しばらく躊躇した後、意を決して浴室を出た。そこには同じような白いリネンのローブを着た逞しい男性が手に火の灯った燭台を持ち立っていた。出て行くと、燭台を棚に置いて私を抱きかかえて寝室へと運んで行った。
そこでぱっちりと目が覚めたとき、しまったと思った。どうして目が覚めてしまったんだ、と、自分を責めてもう一度目をつむったけれど、寝ること叶わず脱力。気を取り直して、すごく感覚的にリアルな夢だったので反芻しようと場面をたどる。そのうちに感じた違和感。私の目を通して見た景色だったけれど、全く違う女性の人生に入り込んだような夢だったのだ。
鏡の中に映った自分は、髪の毛の色こそ黒いのだけれど異国の妙齢の女性だった。スペイン人のような顔立ち、調度品もそんな感じだった。意志の強そうな彼女は50代前半くらいだろうか。眉間や額にうっすらと広がる年月の刻印。なんだか悩んでいるように見えたのは、年齢差と愛の葛藤だったのだろうか。そして夢の中の男性はどう考えてもその女性よりも10歳以上は若かった。下手すると親子ほど離れていたのかもしれない。だから彼女は悩み、迷っていたのかもしれない。逞しく、誠実そうで知的な美しい男性。彼らが深く愛し合っていることは感覚として残っていた。一体あの二人にはどんな巡り合わせと背景があったのだろうか。あれは紛れもなく初めて共に迎える夜のように思われたのだ。
印象に残る夢はいくつもあるけれど、この夢ほど前後の展開が知りたいと感じたものはない。当時夢を見た方の私は30代後半。いろいろあって感情に揉まれている最中。強く求められ、深く愛し合うというのはなんと甘美で力強いのだろう。そしてそれを受け入れるのは怖いことなのかもしれない。当時ちょっと混乱気味に反芻した明け方未明の鮮烈な夢。
何度か思い出しては、いいよな〜あれ。あの時代に戻りたい。あの夢の中を生きたい。とか思っちゃったこともある。
今朝、その夢の中の女性に近づいた私は思う。くるくるローブを翻すほど回って、踊りながら彼の胸に行けよ、と。赤いワインを片手に、チャオ!と。
なんだかエロスはいなくなってしまった。けれど、夢を見た当時より私うんとしあわせだな、と、朝日を浴びながらありがとう。
夜が明けました。おはよう、2017年11月24日の私。