オタケビ
うちは動物園の見下ろす丘の上に建っている。中部でも残り少なくなってきた熱帯ジャングルの裾野の向こうは動物たちのいるところ。
姿は見えない。ジャングルが覆っているから。臭いもしない。
けれど音だけは別だ。ジャングルの茂みも音は隠してはくれない。
朝起きてゆっくりと白湯を飲んでいると
んごおおおおおおおおおぅぅぅぅぅぉ
んがうううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぉ
ぱきーーーーーーーーん
ぱおーーーーーーーーんんんん
ぐおううううううううぅぅぅぅぅぅぅぉぉ
といきなりオタケビを放つ。
自由だな、と思う。
何か体内の奥からエネルギーが生まれ、それが大きくうねり出す。それを音として放つのはきっとすごく気持ちがいいに違いない。
感情でもない、と思う。あれは命のうねり。毎日生まれては、臓腑を満たし身体から溢れて放たれる生命の放射。
俺生きてるうううううううううううううおおおおおおおおおぅぅぅぅぅ
あたしもだよおおおおおおおおおおおおおぅおぅぅぅぅぅぉぉぉーん
そうして彼らはお互いの存在を知り、距離を保って生きていくのだろう。
オタケビは毎朝毎昼何度か繰り返し起こっている。がしかし、聴こえない時もある。それはこちらの都合。
聴こえた時には、こちらにもその生命力が流れてきて気分が上がる。あまりにすごいのを聞いた時など、ふふふと笑ってしまう。私も生きてるよ、と小さく呟く。
今日はいいお天気。空気も澄んで、空は青く、太陽は煌めいている。そうそう、太陽の温度が実は27度しか計測されないってホント?